鉄フライパンは洗剤NGではない|洗剤を使った正しい洗い方

クレア

鉄フライパンって洗剤使っていいの?

いいって言ったりだめって言ったり、どっちなの?

ルカ

どっちも聞きますね

アリス

目的次第ではどちらも正しいわ

中性洗剤は皮膜を落とさない
アルカリ性洗剤は皮膜を落とす

この性質を使って、目的に合わせた使い方をすればいいわ

ルカ

それでは、どんな時に洗剤を使うのか、なぜ中性洗剤は皮膜を落とさなくて、アルカリ性洗剤は皮膜を落とすのかなど、鉄フライパンにとって洗剤は何なのかを整理しましょう

目次

結論 鉄フライパンに洗剤は使っていい

  • ベタつき
  • 臭い
  • 劣化油

には中性洗剤を使う

焦げ付きや油の固着がひどい場合は、アルカリ洗剤を使う

クレア

汚れは落とした方がいいってことだね!

アリス

その通りよ
汚れが残ると不衛生なだけでなく、くっつく原因にもなるわ

洗剤NGは、鉄フライパン普及当時の鉄・洗剤・油では合理性があった

クレア

そもそも、なんで洗剤NGって言われるの?

アリス

話は、鉄フライパンが家庭に普及し始めた、明治〜昭和初期に遡るわ

当時の洗浄は、
  • 石鹸

などが主流だった。

当時のフライパンは、
  • 防錆処理が弱い
  • 鉄表面が不安定

ものも多かった。

当時の油は、
  • 動物油
  • 菜種油
  • 胡麻油

などが主流だった。

つまり、

  • 皮膜を分解しやすい石鹸や灰
  • 皮膜が安定しにくい油
  • サビやすい鉄フライパン

という組み合わせだった可能性が高い。

クレア

昔は製鉄や精油、洗剤の技術が今ほどではなかったから、皮膜を維持する方法が洗剤NGくらいだった
そして今もそれを鵜呑みにしてる人がいるってことだね!

アリス

知識はアップデートして、正しく使いましょう

中性洗剤は油を浮かせ、アルカリ性洗剤は油を分解する

クレア

洗剤って、濃ければ強くて、薄ければ弱いってわけじゃないの?

アリス

濃さで強さは変わるけれど、何を落とすかは別の話よ

中性洗剤とアルカリ性洗剤は、油への作用そのものが違うの

①鉄フライパン表面に存在する状態
  • 遊離油:加熱・反応していない液体の油
  • 酸化油:酸素と反応して性質が変化した油
  • 重合油膜:加熱で化学結合し、膜状に固化した油
  • 炭化物:油や食材が熱分解して炭素化した残留物
  • 酸化鉄層:鉄が酸化してできた金属表面の変質層
②界面活性剤とは

水と油のような、本来混ざりにくい境界面(界面)を、界面化学的に変化させ(活性)、混ざりやすい状態へ変える物質(剤)である。

界面活性剤は、1分子の中に、

  • 親水基(水と相互作用する部分)
  • 疎水基(油と相互作用する部分)

を同時に持つ。

この構造により、界面活性剤は油と水の境界へ配置される。

疎水基が油へ結合し、親水基が水側へ向くことで、油は界面活性剤に包まれた状態になる。

この状態をミセルという。

中性洗剤の主成分である界面活性剤によりミセル化した油は、水中へ分散可能になり、表面から除去される。

③アルカリ性洗剤は

界面活性剤のように油を分散するだけではなく、油脂そのものへ化学反応を起こす。

アルカリとは、

水中で OH⁻ を増加させる性質

  • 石鹸(アルカリ性を示す脂肪酸塩であり、界面活性剤としても働く)
  • セスキ炭酸ソーダ
  • 苛性ソーダ系洗剤

などが含まれる。

油脂(トリグリセリド)の構造

脂肪酸(油の鎖)

        │

脂肪酸 ─ グリセロール ─ 脂肪酸

        │

脂肪酸

・グリセロール→ 油脂の骨格になる部分

・脂肪酸→ 油の性質を持つ鎖状構造

・トリグリセリド(tri glyceride)→ 3本(tri)の脂肪酸が、グリセロールへ結合した油脂構造

アルカリによる鹸化(saponification)

脂肪酸(油の鎖)

        │

脂肪酸 ─ グリセロール ─ 脂肪酸

        │

脂肪酸

        ↓ アルカリ(OH⁻)

脂肪酸塩 + グリセロール + 脂肪酸塩 + 脂肪酸塩

・脂肪酸塩→ 水へ分散しやすい石鹸成分

・鹸化→ アルカリによって、油脂を石鹸成分へ変化させる反応

アルカリ性洗剤中のアルカリ剤は、油脂の脂肪酸とグリセロールを結ぶエステル結合へ作用し、油脂を分解・鹸化しやすくする。

中性洗剤

落とすもの

  • 遊離油
  • 軽度の酸化油

落とさないもの

  • 重合油膜
  • 炭化物
  • 酸化鉄層

※強固な重合油膜は通常の中性洗剤では除去されにくい

アルカリ性洗剤

落とすもの

  • 遊離油
  • 酸化油
  • 固着しかけた油
  • 一部の重合油膜

※強アルカリほど重合油膜を分解・除去しやすい

落とさないもの

  • 炭化物
  • 酸化鉄層

※ 炭化物は、

油脂ではなく熱分解した炭素系残留物であるため、

中性洗剤・アルカリ性洗剤のどちらでも除去しにくい。

  • 金属たわし
  • スクレーパー
  • クレンザー

などで削る、剥がす

クレア

油汚れにも種類があって、目的に合わせた洗剤じゃないと、ちゃんと落とせないんだね!

アリス

そうよ
強弱だけでなく、作用も考えられるようになることは、洗剤の無駄遣いを抑えることになるから、節約にも繋がるわ

使用後は中性洗剤で洗い、火で乾かす

クレア

洗う時に気をつけることは?

アリス

何で汚れているのかを見分けることと、サビないように、拭くだけでなく火で乾かすことよ

 

STEP
調理後、中性洗剤で洗う
  • 食材カス
  • 遊離油
  • 酸化油

を除去する。

ベタつきは、

  • 遊離油
  • 酸化油

が残留している状態である。

STEP
洗浄後、火で乾かす

水分を拭き取り、加熱して乾燥させる。

強いベタつきはアルカリ性洗剤を使う

強いベタつきや、

酸化油が固着している場合は、

  • セスキ炭酸ソーダ
  • アルカリ性洗剤

を使う場合もある。

ただしアルカリは、

油脂そのものを分解するため、重合油膜まで除去しやすくなる。

洗浄後は、必要に応じて再度油膜を形成する。

クレア

油汚れ系は中性洗剤でダメならアルカリ性洗剤

炭化物系はスポンジでダメなら金属たわしを使えばいいんだね!

アリス

油汚れ系はベタつき、ぬめり、油臭さ

炭化物系はザラつき、引っかかり、黒い固着で見分けるといいわ

色ムラがあっても、均一に滑らかで乾いていればいい状態よ

Q&A

クレア

他にも気を付けることはある?

アリス

洗剤に関しては、食洗機などの強アルカリ性洗剤くらいかしら

現代の鉄フライパンの皮膜は、基本的にはリセット可能だから、あまりNGというほどのものはないわ

とはいえ、全くないわけではないから整理するわね

強アルカリ洗剤は皮膜を落とすなら使うべきではないのか?

通常使用では使うべきではない。

強アルカリ洗剤は油脂を分解するため、皮膜も含めてリセットする方向に作用する。

ただし、焦げ付きや失敗で状態が崩れた場合は、意図的にリセットする手段としては有効。

中性洗剤を使った後に油を塗り直す必要はある?

必須ではない。

中性洗剤は皮膜を除去しないため、そのまま使用可能。

ただし、保管時の防錆や状態維持のために軽く油を塗るのは有効。

食洗機は使える?

非推奨。

高温・強アルカリ環境により、皮膜や鉄表面にダメージを与える可能性があるから。

アルカリ洗剤や食洗機で、鉄フライパンは劣化しないの?

本体(鉄)は基本的に劣化しないが、表面状態は大きく崩れる。

強アルカリや食洗機環境は油脂を分解するため、樹脂皮膜は落ちる方向に作用する。

さらに防錆の油分も失われやすく、サビやすい状態になる。

ただし、皮膜は再生可能で、サビも除去できるため、リセットすれば使用は継続できる。

鉄フライパンを使う上で、気をつけるべこことは?

空焚きのしすぎや急冷などによる変形は元に戻らないため、そうした扱いには注意が必要。

普段の洗う道具は何でもいいの?

普段はスポンジや竹ささらなどがおすすめ。

研磨する面や研磨剤入りスポンジは、特にできかけの皮膜を落とすことがあるので、目的次第では注意が必要。

クレア

もしかして、鉄フライパンってすごい強いんじゃない?

アリス

ええ、他に無いくらい強いわ

鉄フライパンの母材は鉄と炭素を含む鋼

表面は消耗品でありながら再形成が可能

極端な空焚きや急冷をしなければびくともしないわ

、これは調理器具としては非常に特殊で、成分と組織と厚みをかなり均一に作れる現代の製鉄技術と、表面に対する理解があってこそできることなの

出典・根拠となる学問領域

ルカ

この記事は、下記分野の知識体系に基づいて整理しています

  • 界面化学(界面活性剤・ミセル形成)
  • コロイド化学(分散・乳化)
  • 有機化学(脂肪酸・トリグリセリド・鹸化)
  • 油脂化学(脂質の構造と反応)
  • 表面化学(界面エネルギー・付着)
  • 金属腐食学(鉄の酸化・錆の生成)
  • 材料表面工学(酸化膜・皮膜・表面状態)
  • 調理科学(加熱による油の変質・重合・炭化)
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この記事を書いた人

料理中に起きる現象を、子どもでも分かるように説明する人。

納豆、煮物、漬物など、
渋めの和食が好き。

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