サビない鉄フライパンを作る、基本メンテナンス

クレア

鉄フライパンのメンテナンスって、何したらいいの? 油ならしとか油返しとか、覚えるの大変そう

ルカ

サビないためにすることが多そうなイメージはありますね

アリス

そうかしら?

鉄は、環境条件によって比較的安定しやすい状態へ姿を変える性質があるの

この性質さえ理解すれば、どの作業もやっていることは同じとも言えるわ

つまり、鉄フライパンとして扱いやすい状態を維持するということね

ルカ

それでは、鉄フライパンとして扱いやすい状態を維持するメンテナンスとは何か、具体的な手順や道具など、整理していきましょう

目次

鉄フライパンのメンテナンスとはくっつきにくく、サビにくい表面状態を維持・再生するために行う、加熱調理以外の操作

  • 洗浄→調理後は毎回
  • 乾燥→調理後は毎回
  • 油ならし→基本的には初回のみ
  • 油返し→調理前は毎回
  • サビ取り→サビがある時のみ

など

クレア

これってどれも、放っておくと自然に赤錆になるのを遅らせるための作業だね!

アリス

鉄フライパンとして扱いやすい状態を維持するとは、そいうことよ

使用後のメンテナンスは、洗って、乾かすだけ

クレア

実際には何をすればいいの?

クレア、あんまりたくさんは覚えられないよ〜

アリス

それなら、洗って、乾かす
この2つをしっかりとやることね

STEP
洗浄

中性洗剤とスポンジで洗い、水またはお湯で流す

STEP
乾燥

パチパチ音がしなくなるまで火にかけ、水分を完全に飛ばす

鉄フライパンは、水分が残るとサビやすいだけでなく、塩分も残るとサビやすさが加速するため、洗浄後すぐに加熱して完全に乾燥させる。

クレア

メンテナンスって言っても、ちゃんと洗って乾かしてさえいれば、それ以外のことって、出番は来ないんじゃない?

アリス

その通りよ

水分と塩分さえ除去出来ていれば、自然に赤錆になるまで、梅雨時期でも半年はかかるわ

洗う道具は不織布スポンジがメイン

クレア

洗う道具はなんでもいいの?

アリス

基本的にはこの7種類だけど、普段は不織布付きスポンジひとつで十分じゃないかしら 油が気になるなら、食器用と分けるくらいね

ネットスポンジ

落としやすい汚れ

  • 油汚れ
  • 調理直後の軽い汚れ

特色

柔らかく、普段の洗浄に使いやすい。

皮膜への影響

表面を削りにくく、日常使い向き。

不織布付きスポンジ

落としやすい汚れ

  • 軽い焦げ付き
  • こびり付き始めた汚れ

特色

研磨力があり、スポンジだけでは落ちない汚れにも対応しやすい。

皮膜への影響

強く擦ると表面の皮膜も削れやすい。

たわし

落としやすい汚れ

  • 細かい凹凸に入った汚れ
  • 軽い焦げ付き

特色

繊維が細かい隙間に入り込みやすい。

皮膜への影響

比較的ダメージが少ない。

金たわし

落としやすい汚れ

  • 強い焦げ付き
  • 炭化した汚れ
  • サビ

特色

研磨力が非常に高い。

皮膜への影響

表面の皮膜も削りやすい。

竹ささら

落としやすい汚れ

  • 調理直後のこびり付き
  • 温かいうちの柔らかい焦げ付き

特色

竹を細かく割った昔ながらの洗浄道具。

フライパンがまだ温かいうちに、お湯と一緒に使われることが多い。

竹がしなるため、表面に沿って汚れを剥がしやすい。

皮膜への影響

金属製の道具より表面を削りにくい。

チェーンメイル

落としやすい汚れ

  • 焦げ付き
  • 焼き付き
  • 固着した汚れ

特色

金属リングが動きながら接触するため、焦げを剥がしやすい。

皮膜への影響

金たわしより強く削り続けにくいが、皮膜への影響はある。

スクレーパー

落としやすい汚れ

  • 厚い焦げ
  • 固着した炭化物

特色

ヘラ状の道具で、物理的に剥がす用途。

皮膜への影響

局所的に皮膜を削ることがある。

クレア

皮膜は削れても、鉄が削れちゃう道具はないよね?

アリス

安心して

鉄の方が硬いから削れないわ

傷が付いたような見た目にはなるけど、基本的には皮膜が落ちただけ
油返しや加熱調理を繰り返すうちに目立たなくなるわ

メンテナンス原理は、周囲環境に応じて化学状態を変化させ続ける性質を利用したもの

クレア

でもさ、どうして洗って乾かすと、鉄フライパンとして扱いやすい状態になるの?

アリス

鉄フライパンの原材料は鉄鉱石

中身はほぼ酸化鉄

どうやって酸化鉄が鉄フライパンになるのかを知れば見えてくるわ

1. 高炉内での還元:環境条件による状態遷移

酸化鉄は、大気環境下において安定しやすい鉄の化学状態

高炉内部では、高温かつ一酸化炭素濃度の高い還元環境が形成される

この環境下では、酸化鉄として存在するよりも、金属鉄として存在する方が熱力学的に安定となるため、鉄は金属状態へ遷移する

反応

$$ Fe_2O_3 + 3CO \rightarrow 2Fe + 3CO_2 $$

酸化鉄と一酸化炭素が反応し、金属鉄と二酸化炭素が生成される

一酸化炭素が酸化鉄中の酸素と反応し、鉄-酸素結合が解離することで金属鉄が生成される

2. 大気環境下での酸化:腐食生成物の形成

金属鉄は、常温の大気環境下では、酸素・水分と反応しながら別の化学状態へ移行していく

反応

$$ 4Fe + 3O_2 + 6H_2O \rightarrow 4Fe(OH)_3 $$

金属鉄と酸素、水が反応し、水酸化鉄が生成される

生成される赤錆は、主に含水酸化鉄・オキシ水酸化鉄から構成される腐食生成物

赤錆は内部に多数の隙間を持つ「多孔質構造」を形成する

この構造では酸素・水分が内部へ侵入しやすく、鉄表面での反応が継続しやすくなる

3. 加熱処理による黒錆生成:緻密酸化層の形成

鉄フライパンのメンテナンスは、反応進行を抑制しやすい表面状態へ制御する

反応

$$ 3Fe + 2O_2 \rightarrow Fe_3O_4 $$

金属鉄と酸素が反応し、黒錆の主成分である四酸化三鉄が生成される

高温条件下で酸化反応を制御すると、赤錆とは異なる、緻密で密度の高い酸化皮膜が形成される

この層は酸素・水分の移動を抑制する「拡散障壁」として機能し、内部鉄での反応速度を低下させる

4. 鉄フライパンのメンテナンスとは、その性質を利用して、鉄フライパンとして扱いやすい状態を維持すること

鉄は、周囲環境に応じて化学状態を変化させ続ける物質です。

鉄表面に対して、

  • 無機酸化物(酸化皮膜)
  • 有機被膜(酸化重合・熱分解生成物)

が混在する不均一なバリア層を構築し、

酸素・水分・油脂・塩分との界面反応を制御することで、鉄表面の反応速度を実用的な範囲まで低下させる表面制御プロセス

つまり、鉄の環境条件と表面状態を制御することで、「鉄フライパンとして扱いやすい状態」を維持するということ

クレア

洗って乾かせば、水は鉄表面になくなって、酸素だけでは反応が遅くなるから、鉄フライパンとして使いやすい状態なんだね!

クレア

腐食工学では、酸素だけで進む反応を乾燥酸化というわ

さらに水があると、湿食・電気化学腐食になって、これが一般的な赤錆の原因

そして塩が加わると、塩害腐食・塩化物腐食と呼ばれて、電池みたいな反応がさらに強くなるの

メンテナンスQ&A

クレア

これだけ知ってれば、クレアもうメンテナンスマスター?

アリス

もう少しね
サビてしまったり、くっついてしまった時の対処法が必要よ

手順通りのはずなのにサビが出た

水分や塩分、汚れなどが残っている可能性が高いです

洗浄時に落としきれていない汚れなど、乾かしきれていない水分や落としきれていない塩分が残っている、このどちらかまたは両方を見直してみて下さい

手順通りのはずなのにくっつくようになった

予熱不足など調理起因、または、水分や塩分、汚れなどが残っているなどメンテナンス起因、または、その両方の可能性が高いです

調理起因なら、食材投入時に発生する水分を蒸発させ続けられるか、油膜が機能しているか、鉄表面との直接接触時間を最小限に抑えられているか

メンテナンス起因なら、洗浄時に落としきれていない汚れなどはないか、乾かしきれていない水分や落としきれていない塩分が残っていないかを見直してみて下さい

クレア

サビたから失敗😞
 くっつかなかったら成功🤩‼️ 

って思ってたけど、それはクレアの感情で、実際には原因があって結果があるだけなんだね

でもやっぱり、くっつかなかったら、クレア嬉しいなぁ☺️ 

アリス

放置したから赤錆
メンテナンスしたから黒錆

どちらも酸化はしてるしね

楽しい気持ちでいるためにも、知識は役に立つのよ

根拠・出典|界面化学、腐食科学電気化学、伝熱工学などに基づく

ルカ

ここで扱っている内容は、鉄フライパンのメンテナンスという日常的な行動を、界面化学や電気化学、材料工学などの視点で“理解しやすい形に再解釈したもの”です

つまり、唯一の正解としての説明ではなく、現象を整理するための一つのモデルに過ぎません

1. 洗浄
  • 本文:中性洗剤で洗い、汚れ・塩分を落とす
  • 現象:界面付着物の剥離・分散
  • 法則:界面張力低下による付着エネルギー破壊(Youngの式)
  • 学問:界面化学
2. 乾燥
  • 本文:加熱し水分を完全に飛ばす
  • 現象:水の相変化と電解質層の消失
  • 法則:電気化学腐食回路の成立条件(電解質水膜)の消失
  • 学問:腐食科学・電気化学・伝熱工学
3. 油ならし
  • 本文:加熱により油膜を形成する
  • 現象:油脂の酸化重合による固着膜形成
  • 法則:ラジカル連鎖反応による高分子化
  • 学問:高分子化学・表面科学
4. 油返し
  • 本文:調理前に油膜を再形成する
  • 現象:固体接触の分離と潤滑膜形成
  • 法則:境界潤滑領域の摩擦低減(Stribeck曲線)
  • 学問:トライボロジー
5. サビ取り・研磨
  • 本文:焦げ・サビを物理的に除去する
  • 現象:酸化層の破壊と機械的摩耗
  • 法則:硬度差による選択的摩耗(Archardの摩耗則)
  • 学問:材料工学・表面工学
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

調理器具愛好家

プロ料理人としての経験は全くありませんが、気に入った調理器具を徹底的に使い倒し、調べ上げ、まとめることを趣味としています。

調理器具ごとの特性や強みを最大限引き出す調理法・メンテナンス法を発信。

納豆、煮物、漬物など、渋めの和食が好き

コメント

コメントする

目次