クレア鉄フライパンって洗剤使っていいの?
いいって言ったりだめって言ったり、どっちなの?



どっちも聞きますね



目的次第ではどちらも正しいわ
中性洗剤は皮膜を落とさない
アルカリ性洗剤は皮膜を落とす
この性質を使って、目的に合わせた使い方をすればいいわ



それでは、どんな時に洗剤を使うのか、なぜ中性洗剤は皮膜を落とさなくて、アルカリ性洗剤は皮膜を落とすのかなど、鉄フライパンにとって洗剤は何なのかを整理しましょう
結論 鉄フライパンに洗剤は使っていい
- ベタつき
- 臭い
- 劣化油
には中性洗剤を使う
焦げ付きや油の固着がひどい場合は、アルカリ洗剤を使う



汚れは落とした方がいいってことだね!



その通りよ
汚れが残ると不衛生なだけでなく、くっつく原因にもなるわ
洗剤NGは、鉄フライパン普及当時の鉄・洗剤・油では合理性があった



そもそも、なんで洗剤NGって言われるの?



話は、鉄フライパンが家庭に普及し始めた、明治〜昭和初期に遡るわ
- 石鹸
- 灰
などが主流だった。
- 防錆処理が弱い
- 鉄表面が不安定
ものも多かった。
- 動物油
- 菜種油
- 胡麻油
などが主流だった。
つまり、
- 皮膜を分解しやすい石鹸や灰
- 皮膜が安定しにくい油
- サビやすい鉄フライパン
という組み合わせだった可能性が高い。



昔は製鉄や精油、洗剤の技術が今ほどではなかったから、皮膜を維持する方法が洗剤NGくらいだった
そして今もそれを鵜呑みにしてる人がいるってことだね!



知識はアップデートして、正しく使いましょう
中性洗剤は油を浮かせ、アルカリ性洗剤は油を分解する



洗剤って、濃ければ強くて、薄ければ弱いってわけじゃないの?



濃さで強さは変わるけれど、何を落とすかは別の話よ
中性洗剤とアルカリ性洗剤は、油への作用そのものが違うの
- 遊離油:加熱・反応していない液体の油
- 酸化油:酸素と反応して性質が変化した油
- 重合油膜:加熱で化学結合し、膜状に固化した油
- 炭化物:油や食材が熱分解して炭素化した残留物
- 酸化鉄層:鉄が酸化してできた金属表面の変質層


水と油のような、本来混ざりにくい境界面(界面)を、界面化学的に変化させ(活性)、混ざりやすい状態へ変える物質(剤)である。
界面活性剤は、1分子の中に、
- 親水基(水と相互作用する部分)
- 疎水基(油と相互作用する部分)
を同時に持つ。
この構造により、界面活性剤は油と水の境界へ配置される。
疎水基が油へ結合し、親水基が水側へ向くことで、油は界面活性剤に包まれた状態になる。
この状態をミセルという。
中性洗剤の主成分である界面活性剤によりミセル化した油は、水中へ分散可能になり、表面から除去される。


界面活性剤のように油を分散するだけではなく、油脂そのものへ化学反応を起こす。
アルカリとは、
水中で OH⁻ を増加させる性質
- 石鹸(アルカリ性を示す脂肪酸塩であり、界面活性剤としても働く)
- 灰
- セスキ炭酸ソーダ
- 苛性ソーダ系洗剤
などが含まれる。


脂肪酸(油の鎖)
│
脂肪酸 ─ グリセロール ─ 脂肪酸
│
脂肪酸
・グリセロール→ 油脂の骨格になる部分
・脂肪酸→ 油の性質を持つ鎖状構造
・トリグリセリド(tri glyceride)→ 3本(tri)の脂肪酸が、グリセロールへ結合した油脂構造


脂肪酸(油の鎖)
│
脂肪酸 ─ グリセロール ─ 脂肪酸
│
脂肪酸
↓ アルカリ(OH⁻)
脂肪酸塩 + グリセロール + 脂肪酸塩 + 脂肪酸塩
・脂肪酸塩→ 水へ分散しやすい石鹸成分
・鹸化→ アルカリによって、油脂を石鹸成分へ変化させる反応
アルカリ性洗剤中のアルカリ剤は、油脂の脂肪酸とグリセロールを結ぶエステル結合へ作用し、油脂を分解・鹸化しやすくする。


落とすもの
- 遊離油
- 軽度の酸化油
落とさないもの
- 重合油膜
- 炭化物
- 酸化鉄層
※強固な重合油膜は通常の中性洗剤では除去されにくい
落とすもの
- 遊離油
- 酸化油
- 固着しかけた油
- 一部の重合油膜
※強アルカリほど重合油膜を分解・除去しやすい
落とさないもの
- 炭化物
- 酸化鉄層
※ 炭化物は、
油脂ではなく熱分解した炭素系残留物であるため、
中性洗剤・アルカリ性洗剤のどちらでも除去しにくい。
- 金属たわし
- スクレーパー
- クレンザー
などで削る、剥がす



油汚れにも種類があって、目的に合わせた洗剤じゃないと、ちゃんと落とせないんだね!



そうよ
強弱だけでなく、作用も考えられるようになることは、洗剤の無駄遣いを抑えることになるから、節約にも繋がるわ
使用後は中性洗剤で洗い、火で乾かす



洗う時に気をつけることは?



何で汚れているのかを見分けることと、サビないように、拭くだけでなく火で乾かすことよ
- 食材カス
- 遊離油
- 酸化油
を除去する。
ベタつきは、
- 遊離油
- 酸化油
が残留している状態である。
水分を拭き取り、加熱して乾燥させる。
強いベタつきや、
酸化油が固着している場合は、
- セスキ炭酸ソーダ
- アルカリ性洗剤
を使う場合もある。
ただしアルカリは、
油脂そのものを分解するため、重合油膜まで除去しやすくなる。
洗浄後は、必要に応じて再度油膜を形成する。



油汚れ系は中性洗剤でダメならアルカリ性洗剤
炭化物系はスポンジでダメなら金属たわしを使えばいいんだね!



油汚れ系はベタつき、ぬめり、油臭さ
炭化物系はザラつき、引っかかり、黒い固着で見分けるといいわ
色ムラがあっても、均一に滑らかで乾いていればいい状態よ
Q&A



他にも気を付けることはある?



洗剤に関しては、食洗機などの強アルカリ性洗剤くらいかしら
現代の鉄フライパンの皮膜は、基本的にはリセット可能だから、あまりNGというほどのものはないわ
とはいえ、全くないわけではないから整理するわね



もしかして、鉄フライパンってすごい強いんじゃない?



ええ、他に無いくらい強いわ
鉄フライパンの母材は鉄と炭素を含む鋼
表面は消耗品でありながら再形成が可能
極端な空焚きや急冷をしなければびくともしないわ
、これは調理器具としては非常に特殊で、成分と組織と厚みをかなり均一に作れる現代の製鉄技術と、表面に対する理解があってこそできることなの
出典・根拠となる学問領域



この記事は、下記分野の知識体系に基づいて整理しています
- 界面化学(界面活性剤・ミセル形成)
- コロイド化学(分散・乳化)
- 有機化学(脂肪酸・トリグリセリド・鹸化)
- 油脂化学(脂質の構造と反応)
- 表面化学(界面エネルギー・付着)
- 金属腐食学(鉄の酸化・錆の生成)
- 材料表面工学(酸化膜・皮膜・表面状態)
- 調理科学(加熱による油の変質・重合・炭化)


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