ガパオライスとガパオライス風炒めごはん
ジュッという音とともに立ち上る煙。
屋台の鉄鍋から、唐辛子とにんにく、魚醤、そしてホーリーバジルが入り混じった、目の覚めるような香りがあふれ出す。
その香りを吸い込んだだけで、汗が滲み、胃が目を覚ます。
白いごはんの上に、濃い茶色の炒め肉がこんもり盛られ、カリッと揚がった目玉焼きがどんと乗る。
それが、現地タイで出会った「ガパオライス」だった。
本来のガパオライス(パット・ガパオ)は、「ホーリーバジル炒めごはん」のこと。
“ガパオ”とはホーリーバジルのことを指し、その独特な香りと、少し苦みを帯びた清涼感が味の核をなしている。
だからこそ、ホーリーバジルなしでは、厳密にはガパオライスとは呼べない。
日本でよく見かける「ガパオライス」は、スイートバジルを使って作られていることが多い。
スイートバジルは甘く柔らかい香りで、ホーリーバジルの刺激的な風味とは異なる。
結果として、味わいは穏やかでまろやか。ガパオライス風ではあるけれど、別物といえば別物だ。
だけどそれでも、この香りと味には、確かに“旅の気配”がある。
唐辛子の熱、にんにくの香ばしさ、ナンプラーのコク、そしてバジルの爽やかさ。
ホーリーバジルでなければ生まれない風もあるけれど、スイートバジルだからこそ、毎日のごはんに寄り添うやさしさがある。
今日は、そんな“ちょっとやさしい”タイ風バジル炒めを。
旅の記憶をたぐり寄せながら、キッチンでほんの少しだけ、東南アジアの熱気を再現してみよう。
レシピ|ガパオライス風炒めごはん
材料(2人分)
• 鶏もも肉(包丁で叩く)…200g
• にんにく…1片(約6g)
• 赤唐辛子…1本(約3g)
• 玉ねぎ…1/4個(約50g)
• パプリカ(赤・黄)…各1/4個(計60g)
• バジルの葉…10枚(約3g)
• ナンプラー…大さじ1(約15g)
• オイスターソース…大さじ1(約18g)
• 砂糖…小さじ1(約3g)
• こしょう…適量(約0.5g)
• 目玉焼き…2個(約120g)
• ごはん…2膳分(約300g)
作り方
1. 鶏肉を叩いてミンチ状にする

→ 粗めに叩くことで、食べ応えアップ。
2.にんにく&唐辛子を炒める
→ 弱火でじっくり香りを出すのがコツ。
コールドスタートだと焦げにくい

3.ミンチにした鶏肉・みじん切りにした野菜を炒める

→ 強火でサッと炒め、うまみを閉じ込める。
4. ナンプラー以外の調味料(オイスターソース、砂糖)を加える

→ ナンプラーは最後に入れて風味を残す。
5. 仕上げにバジルを加え、さっと混ぜる

→ 火を止める直前に入れると香りが引き立つ。
6. ごはんに盛り付け、目玉焼きをのせて完成!

実食|ガパオライス風炒めごはん
スプーンを差し入れた瞬間、ふわっと甘く爽やかな香りが広がった。
にんにくと唐辛子の風味が、鼻の奥にじんわりと残る。
ひと口。
スイートバジルの柔らかな香りが、ピリ辛の肉とごはんを優しく包み込んでくる。
本場のガパオのような強烈な刺激はない。けれど、その代わりに、どこか落ち着いた深みがある。
「……これ、すごく食べやすいな。ちゃんとスパイシーだけど、バジルがまろやかにしてくれてる感じ」
食べ終えた彼は、スプーンを置いてぽつりとつぶやいた。
「……ごちそうさま」
Alice Tips|ガパオライスうんちく
・ホーリーバジルとスイートバジルの違い
ホーリーバジルは、タイ語で“ガパオ”。これがこの料理の名前の由来。スイートバジルよりも香りが強く、少し苦みがある。日本での入手が難しい場合は、スイートバジルや大葉で代用できるが、風味はかなり異なる。
・ナンプラーの使い方
ナンプラーは加熱しすぎると風味が飛ぶため、仕上げのタイミングがポイント。少し香りが立つくらいで火を止めるのがベスト。
・辛さの調整
本場の屋台では、かなり辛めに仕上げることが多いが、家庭では赤唐辛子の量を減らしたり、種を取ってマイルドにするのが現実的。
・屋台料理の役割
ガパオは“目を覚ますごはん”。暑さと疲れの中で活力をくれる、タイ人の日常食。だからこそ、「元気を出したい日」にぴったり。
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どうぞ、今日のキッチンにも。
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